東京の下町・清澄白河。昔ながらの商店街に、おしゃれなカフェや雑貨店が点在するこの街の一角で、人工衛星とAIを駆使した衛星データソリューションの開発が行われている。会社の名前はSynspective(シンスペクティブ)。社名には、Synthetic Data for Perspective on Sustainable Development (持続可能な未来のために合成データを活用する)という意味が込められている。新たなデータとテクノロジーにより人の可能性を拡げ着実に進歩する「学習する世界」の実現というミッションを掲げ、そのミッションに共感したプロフェッショナル達が世界21カ国から集まる。
■技術を社会に還元したい
2015年から始まった内閣府主導の「ImPACTプログラム」では、小型SAR(合成開口レーダー)衛星の研究開発が行われていた。そのプログラムマネージャーが、Synspective創業者の一人・慶應義塾大学の白坂成功教授であった。
「ImPACTプログラム」では、大型SAR衛星と同等に近い性能を維持したまま小型・軽量化を実現した世界トップレベルを誇る小型SAR衛星の要素技術が完成した。
開発を進める一方で、白坂はその技術を社会に還元する方法を考えていた。
「この小型SAR衛星の研究成果を社会に還元するためには、民間でビジネスとして取り組んだほうが早い。そして、それには機動力があるベンチャー企業がよい。」
会社設立に動き出した白坂は、新しく立ち上げるベンチャー企業のCEO候補を探し始めた。白坂には、CEOとなる人物像について明確な人材要件があった。
「この会社のCEOとなる人は、ビジネスがちゃんと分かりテクノロジーに造詣があり政府との調整ができる人がよい。」
しかし、白坂の人材要件にピタリとあてはまる候補者が見つからぬまま半年が経過した。
そんなある日、知人を通じて紹介されたのが新井元行である。白坂は、求めていた人材と合致する新井の経歴を知り「この人だ!」と、確信したのであった。
■小型SAR衛星ってビジネスになるの?
白坂は新井に会いに行き、小型SAR衛星の素晴らしさについて熱く語った。しかし、最初の面談で新井からは「少し考えさせてほしい」と、思いがけず塩対応をされてしまう。当時の新井からすると「何をすれば、この衛星を使って売り上げを立てられるのか、ピンとこなかった」らしい。
その後、新井は慎重に検討を重ねた。その結果、収益性のあるビジネスを作ることができると確信する。
「衛星を『衛星』として捉えるのではなく、『データを提供する軌道上のセンサー』であるという見方をし、そのデータを使ったソリューションを考えていくということであれば、ビジネスとしていけるな、と。世の中の流れとも合致しており、具体的なアプリケーションのアイデアもいくつか湧いてきた。」
■データドリブンで持続可能な未来を創る
新井は、これまで、途上国を中心に世界中のさまざまなソーシャルビジネスを手掛けてきた。途上国支援においては、正しいデータを使い、計画を作りモニタリングをしていく必要性を現場で実感し、データドリブンでオペレーションをやっていかないと着実に進歩する世界にはならない、と常々考えていた。
タンザニアでのプロジェクトに携わっていた際、商店を1件1件訪問したことがあった。多くの店を回るうちに、繁盛する店と、そうでない店があり、繁盛する店では帳簿をつけていたことが分かった。帳簿をつけることで「来年のこの時期は、お金が必要になるから準備しておこう」「〇月は、品物が良く売れるので多く仕入れておこう」と先を見通した計画を作ることができるようになる。データを蓄積・理解して将来の見通しを得ることで、商売や生活を考える時間軸が明日から1ヶ月後、1年後へと伸びるのだ。
小型SAR衛星データという新たな広域データは、持続可能な未来を見通すために今後大きな役割を担っていくだろう。また、SAR衛星データだけでなく他のデータとも組み合わせることで、より有用なデータとなりえる。
■2018年2月22日Synspective創業
今までにないデータとテクノロジーを活用し学習することで、着実に進歩する「学習する世界」が実現できる。そんな遠くない未来を見通した白坂と新井は、2018年2月22日にSynspectiveを創業した。
応募はこちらから:https://synspective.com/jp/recruit/